東京が水素で世界をリードする「TOKYO H2」プロジェクト始動 第一弾は水素タクシーの導入

東京が水素で世界をリードする「TOKYO H2」プロジェクト始動 第一弾は水素タクシーの導入

TOKYO H2 レポート

東京が水素で世界をリードする「TOKYO H2」プロジェクト始動 第一弾は水素タクシーの導入

9月3日(水)、東京都庁にて「TOKYO H2」プロジェクト始動にあわせた発表イベントが開催された。 「TOKYO H2」とは、燃料電池商用モビリティをはじめとした「水素を使う」アクションを加速させる官民連携プロジェクトである。東京都と水素エネルギーに関連する企業・組織が、水素の社会実装で世界をリードする東京を目指し、水素をテーマにした様々な取り組みを進める。本イベントでは取り組みの第一弾として、クラウンFCEVを起用した燃料電池タクシー(通称:水素タクシー)が発表された。 発表イベント当日は「プロジェクト発表会」「水素タクシー出発式」「水素エネルギー体験イベント」の3部構成となっており、それぞれの様子をお伝えしたい。

「世界に誇る、水素社会・東京」、持続可能な都市の実現を目指していきたい

東京が水素で世界をリードする「TOKYO H2」プロジェクト始動 第一弾は水素タクシーの導入

第1部「プロジェクト発表会」は東京都庁大会議場で行われ、東京都知事 小池百合子氏、一般社団法人水素バリューチェーン推進協議会会長 牧野明次氏・佐藤恒治氏、一般社団法人東京ハイヤー・タクシー協会 会長 川鍋一朗氏が登壇し、それぞれがプロジェクトに対しての想いを語った。 先立って小池百合子都知事による本プロジェクト始動の言葉からイベントは始まった。 「深刻化を増す気候危機への対応やエネルギーの安定確保など、重要な課題に直面している中、脱炭素の鍵を握るのが水素です。 この度、水素を使うアクションを加速させる『TOKYO H2』プロジェクトが始動します。東京都はこれまで、燃料電池バスの導入を始め、水素の普及に向けた先駆的な取組を進めており、今回、日本で初めて燃料電池タクシーを大量導入することとなりました。 この取組を皮切りに、都民の皆様に水素のある社会を身近に感じていただきながら、『世界に誇る、水素社会・東京』、持続可能な都市の実現を目指してまいります。」

“つくる”ところから“使う”ところまで。水素普及の鍵は、産業を超えた連携

東京が水素で世界をリードする「TOKYO H2」プロジェクト始動 第一弾は水素タクシーの導入

一般社団法人水素バリューチェーン推進協議会の佐藤恒治会長(トヨタ自動車株式会社 代表取締役社長)は、本プロジェクトへの意気込みと展望を述べた。 「これまで日本は世界に先駆けて、水素の技術開発や社会基盤づくりを推進してまいりました。また多様な選択肢の実現に向けた技術の実証も進み、水素で調理をする水素グリラーなど、モビリティ以外での利用シーンも広がってきています。 水素社会を実現していくために、ここからは『社会実装』を増やしていくフェーズです。 水素を普及させていくカギは、産業を超えた連携を通じて“つくる”ところから“使う”ところまで一体となって、水素のバリューチェーンを構築していくことであると思います。『TOKYO H2』プロジェクトのもと、タクシーやバス、物流、インフラ事業者とともに、商用モビリティを軸にした水素利用モデルをしっかりと作りあげてまいります。」

街を走る広告塔として、水素の時代に貢献していきたい

東京が水素で世界をリードする「TOKYO H2」プロジェクト始動 第一弾は水素タクシーの導入

一般社団法人東京ハイヤー・タクシー協会の川鍋一朗会長(日本交通株式会社 取締役)は、「TOKYO H2」プロジェクトの第一弾となる水素タクシー導入に対する想いを語った。 「私たちの次なる挑戦は『水素タクシー』の普及です。 東日本大震災の時、ガソリンが全然入手できない中、LPG(液化石油ガス)を燃料とするタクシーは動き続け、市民の足として活躍することができました。10年にいっぺん、20年にいっぺんかもしれないが、エネルギーを複線化しておいた方がいい、と実感したのです。 また、トヨタ製の自家用車を一番最初に使ったのがタクシー業界だと、今は亡き豊田章一郎名誉会長がおっしゃっていました。タクシーはたくさん走って、そこで整備ができる、問題解決ができる。そして、タクシーに乗っていただくことで、お客様の中に浸透していく。街を走る広告塔になる。 この水素の時代に、我々がお役目をいただいたことを、本当に嬉しく思います。」

水素タクシーの都内での運用がついにスタート

東京が水素で世界をリードする「TOKYO H2」プロジェクト始動 第一弾は水素タクシーの導入

プロジェクト発表会の後、第2部「水素タクシー出発式」が都庁正面玄関前にて執り行われた。小池都知事のご発声を合図に、多くの関係者に見送られながら、水素タクシーは東京都内へと走り出していった。 水素タクシーの走行では当然ながらエンジンの音はせず、会場全体が静けさに耳を澄ませながら出発の様子を見守る。やがて車両が都庁前を離れると、見送りの拍手が沸き起こり、会場は和やかな雰囲気に包まれた。

ピザ、コーヒー、自転車。暮らしの中に広がる水素の可能性

東京が水素で世界をリードする「TOKYO H2」プロジェクト始動 第一弾は水素タクシーの導入

都民広場では水素エネルギー体験や交流を目的とした「水素エネルギー体験イベント」が開催され、イベント参加者に対して水素を活用したコンテンツが提供された。

東京が水素で世界をリードする「TOKYO H2」プロジェクト始動 第一弾は水素タクシーの導入
東京が水素で世界をリードする「TOKYO H2」プロジェクト始動 第一弾は水素タクシーの導入
東京が水素で世界をリードする「TOKYO H2」プロジェクト始動 第一弾は水素タクシーの導入
東京が水素で世界をリードする「TOKYO H2」プロジェクト始動 第一弾は水素タクシーの導入

水素ガスを利用したグリルで調理された野菜やソーセージ、ピザ釜でのピザの提供や、水素焙煎コーヒー、燃料電池キッチンカーではメヒカリの唐揚げがふるまわれた。 水素を燃焼させて調理に活用する場合、炎が水蒸気を含み蒸し焼きのようにふっくらと仕上がる。また、焚き火のような高温からガスでは調整できない低い温度まで炎の温度を繊細に調整できるなど、様々な利点があるという。水蒸気のみを排出する水素の燃焼は無臭であり、食材に不要な匂いを移さないことも大きな魅力だ。会場には料理を頬張る参加者たちの笑顔が広がった。

東京が水素で世界をリードする「TOKYO H2」プロジェクト始動 第一弾は水素タクシーの導入
東京が水素で世界をリードする「TOKYO H2」プロジェクト始動 第一弾は水素タクシーの導入

燃料電池モビリティの展示では、「Hydrogen Bike(燃料電池自転車)」や「燃料電池フォークリフト」などの詳しい紹介が行われた。水素の充填や走行距離についての質問が飛び交い、実用化に対する参加者たちの強い関心が感じられた。

軽やかに走り出した「水素社会・東京」の未来

今回の「TOKYO H2」プロジェクトの始動は、東京都が水素エネルギーの社会実装を前進させる大きな節目となった。小池都知事が掲げた「世界に誇る、水素社会・東京」という言葉に各業界が力強く呼応したことは、その実現可能性を裏付けるものでもある。都庁前を静かに走り出した水素タクシーは、単なる目新しいモビリティの誕生ではなく、都民にとって「水素が生活に溶け込んだ未来」を想像させる象徴的な一歩となった。 これから数年をかけて水素の活用シーンは広がり、街の景色も少しずつ変わっていく。本プロジェクトを通して、東京に住む人々がより一層、自らが暮らす都市に誇りを持てる社会になることを期待したい。

BACK PAGE