
水素社会の実現に向け、民間企業・団体約50社が共創の道を探る
TOKYO H2 レポート

2025年9月、脱炭素の鍵を握る水素を使うアクションを加速させる官民連携の『TOKYO H2』プロジェクトが始動した。日本で初めての燃料電池タクシーの大量導入など具体的な取り組みを加速しつつ、『世界に誇る、水素社会・東京』の実現を目指している。 2026年5月28日、川崎重工業株式会社が羽田の地に開設したソーシャルイノベーション共創拠点「CO-CREATION PARK - KAWARUBA」(以下「KAWARUBA」)にて、TOKYO H2プロジェクト参画企業主催の「TOKYO H2 MEETING FOR BUSINESS」が開催された。本イベントは、昨年開催されたJapan Mobility Show 2025でのトークショーをきっかけとして、企業間ネットワークの構築と業界や組織の枠を超えた共創アクションの創出を目指すことを目的に行われたものである。約50団体、およそ100名が集まり、活発な意見交換やネットワーキングが進み、水素社会実現に向けた熱気が高まるイベントとなった。 ここでは、共創に向けて交わされたディスカッションの様子や、企業間の交流の様子をお伝えする。
「KAWARUBA」で水素の社会実装に向けた共創の場を見学

はじめに、東京都による水素エネルギーの普及拡大に向けた取り組みや、TOKYO H2プロジェクトについてのプレゼンテーションが行われた。都と共同で水素の利活用を推進する民間事業者を新たに募集するなど、官民連携によって「水素を使う」アクションを一層強化していく方針が示され、会場では参加者が熱心にメモを取る様子も見られた。

次に、開催場所となった「KAWARUBA」の施設見学ツアーが行われた。「KAWARUBA」は、水素・カーボンニュートラルおよび社会の中で人と共存するソーシャルロボットソリューションをビジネステーマとする共創拠点であり、2024年11月の開所以来、約1万人の多様なやステークホルダーと共に、ソリューションの社会実装を進めている拠点である。 見学では、日本のモータサイクル企業らが参画して設立した技術研究組合HySEによって実現された水素モーターエンジンモーターサイクルや、CO2分離回収技術に関する業界を超えたソリューションのつながりといった共創の実例を通じた説明を受けることで、参加者にとって水素の社会実装に向けた共創活動をより具体的にイメージする機会となった。
参加各社の取り組み紹介を通じ、企業間交流を促進
続いて会場では、水素を利活用している企業から各社の具体的な取り組み紹介と、水素社会実現に向けた連携強化およびネットワーク構築の機会として、企業間交流が行われた。


UCCジャパンによる水素焙煎コーヒーの提供や、川崎重工業による自社の「水素起動2030」をモチーフにしたアクリルスタンドの配布など、8社の特色が表れる展示が施され、活気のある空間で参加者同士の積極的なコミュニケーションの様子が見られた。 「水素社会の意義、価値をどう知ってもらい、理解してもらうか」というテーマは、交流の場でも活発に意見交換がされていた。実際の製品や展示を前にすることで、水素の活用イメージはより具体的になる。モビリティ、食品、外食、エネルギー供給、教育啓発など、異なる分野の取り組みが一堂に会することで、自社単独では見えにくかった連携の可能性を探る場となった。


企業間交流の中では、「各社のアセットをどう掛け合わせるか」という観点に加え「水素の価値を誰に、どのように正しく伝えるか」という点も話し合われた。 そこでは、これまで各社が独自で進めてきた発信の重要性は認識しつつ、企業、業界の枠を超え、発信するメッセージやコミュニケーションの骨子を統一することで、水素社会の認知や理解の促進が深まり、実現に向けた大きなムーブメントにつながるのでないかという意見交換があった。 さらには「業界、組織を超えて、どのように共創環境を実現するか」という点で、担当者同士がすぐにつながることのできる場を作ることで具体的な連携に発展しやすくなるという意見から、参加企業を「部員」、活動の場を「部室」と見立てるような、カジュアルで継続的な企業間ネットワークの仕組みづくりについても議論が交わされている様子も見受けられた。 参加した企業からは、「共通のテーマを掲げる担当者同士が交流できる貴重な機会であり、今後も継続して参加したい」といった感想が寄せられた。
企業間の連携を広げ、水素社会の実現へ
社会課題はますます複雑化、多様化している。水素社会の実現といった大きな目標の達成のためには社会構造全体を変える必要があり、その前には様々な課題が存在する。しかしながら、業界、業種、組織を超え、多様な連携、共創を生み出すことによって、解決の速度は加速していくのではないか。各団体が持つ様々なソリューションをかけ合わせることもまた、解決の糸口に繋がっていくのではないかという可能性が窺えた。 2030年のカーボンハーフ、2050年のゼロエミッション東京の実現に向け、東京都の推進するTOKYO H2プロジェクトとしても、企業間の連携がより活発に広がりを見せていくような体制を今後も整えていきたい。本イベントをきっかけに、企業の垣根を越えた新たな共創が生まれ、水素社会の実現に向けた取り組みがさらに広がっていくことを期待する。